180年以上の歴史を持つ、世界最高峰の時計メーカーPatek Philippe(パテック フィリップ)。
その正規販売店であり、世界を代表する時計店 YOSHIDA(ヨシダ)が、
さまざまな角度からパテック フィリップという至高のマニュファクチュールの魅力を紐解いていく本連載。
第17回は、アクティビティを追求した現代のライフスタイルに寄り添うコンプリケーテッド・ウォッチの特集です。
尽きることのない
コンプリケーションへの情熱
他の追随を許さない圧倒的な商品力、200以上にも及ぶバリエーションで人々を魅了し続けるパテック フィリップの現行コレクションにおいて、その中核を担うコンプリケーテッド・ウォッチは年々目覚ましい進化を遂げています。
ここでの「進化」とは、何を指すのか。その答えは決してひとつではありません。たとえば、創業175年にあたる2014年に発表された20種類の複雑機構を搭載した驚異の腕時計「グランドマスター・チャイム」のように時計製造の限界へ挑戦する試みもあれば、その一方で新しい「年次カレンダー」の開発を皮切りに、実用に重きを置いた“新時代のコンプリケーション”が次々と台頭しています。
次項では、後者に該当する注目のモデルに焦点を当てながらパテック フィリップの先見性に触れていきます。ドレスウォッチとも、スポーツウォッチとも異なる、有用な機能を搭載したコンプリケーテッド・ウォッチの世界をご堪能ください。
CASE.1Ref.5905
実用性に特化した年次カレンダー機構
1996年に発表された「年次カレンダー」は、パテック フィリップが近年手掛けたコンプリケーテッド・ウォッチの方向性を理解する上でも不可欠な最重要コレクションとして挙げられます。
1年に一度、3月1日に調整を行うことで日付、曜日、月名を表示する年次カレンダー機構とは、まさに一般的な日付カレンダーと永久カレンダーの中間に位置する、パテック フィリップが特許取得済みの画期的な複雑機構です。該当する大半のモデルが、Cal.324をベースにした自動巻きムーブメントを搭載しているため、数あるパテック フィリップのコンプリケーションの中でも抜きん出た実用性を誇ります。
もうひとつ、「年次カレンダー」の特徴として挙がるのが、革新的な“モジュール構造”を取り入れていることです。この設計により複数の機構を自在に統合することが可能になったため、結果としてデザインのバリエーションも広がりを見せています。
たとえば、フライバック・クロノグラフを搭載したRef.5905は、クラシックモダンを体現する洗練されたデザインゆえ、スーツからデニムまで、幅広いファッションとの親和性を確約してくれます。シックで重厚感のあるプラチナケース、昨年からコレクションの仲間入りを果たした18Kローズゴールドバージョンもお薦めです。
年次カレンダー搭載フライバック・クロノグラフ
■Ref.5905P ■42mm ■プラチナケース ■アリゲーターストラップ ■自動巻き(Cal.CH 28-520 QA 24H)■30m防水 ■価格はお問い合わせください
年次カレンダー搭載フライバック・クロノグラフ
■Ref.5905 ■42mm ■18Kローズゴールドケース ■アリゲーターストラップ ■自動巻き(Cal.CH 28-520 QA 24H)■30m防水 ■価格はお問い合わせください
CASE.2Ref.5524
最高の視認性を誇るトラベルウォッチ
「カラトラバ・パイロット・トラベルタイム」とは、パテック フィリップのあらゆる現行コレクションを見渡しても、まさしく異色中の異色と呼ぶべきスタイルを確立しています。
ご覧の通り、アビエーションウォッチから着想を得たことが一目で分かるRef.5524のスタイリングは、2015年のバーゼルワールドで一躍話題となり、「パテック フィリップの腕時計として、あまりにも突発的なデザインではないか?」と世界中で物議を醸しました。
ところが、パテック フィリップの歴史を紐解くと、「カラトラバ・パイロット・トラベルタイム」のデザインが確かな文脈に基づくものであることが分かります。同社は、1936年に2点のサイデロメーター(パイロットが現在位置を計測するために用いられた時角時計)を手掛けており、すなわちRef.5524とはこの系譜の延長線上にあるモデルなのです。それでいて、カラトラバ・ケースを採用していたりと、随所にパテック フィリップ特有の意匠を見受けることができます。
見た目のインパクトが強いために見落としてしまうかもしれませんが、Ref.5524が持つ本質とは、あくまでも現代のライフスタイルに適したコンプリケーテッド・ウォッチであることに根ざしています。それを証明するのが、スーパールミノヴァが塗られたゴールドの植字による極太のアラビアンインデックスや時分針がもたらす最高の視認性であり、直感的な操作を可能にした出発地と現地の時刻と昼夜を表示するデュアルタイムの機構です。
スタイルや機能を損なわずに見事サイズダウンに成功したレディスモデルRef.7234、ミニット・リピーターとアビエーションウォッチの統合を実現したRef.5520Pらの派生モデルもRef.5524と同様に、アクティビティをこよなく愛する時計愛好家たちの間で大きな関心を集めています。
カラトラバ・パイロット・トラベルタイム
■Ref.5524 ■42mm ■18Kローズゴールドケース ■カーフスキンストラップ
■自動巻き(Cal.324 S C FUS)■60m防水 ■価格はお問い合わせください
CASE.3Ref.5230 & 7130
国境も時代も超える定番
「ワールドタイム」
「ワールドタイム」は、1932年にRef.96が誕生して以来、パテック フィリップの腕時計の歴史とともに歩んできた複雑機構のひとつに数えられます。
この機構が誕生した起源を遡ると、1884年にワシントンで開催された国際子午線会議で経度0度と定められているグリニッジ天文台を本初子午線とした「グリニッジ標準時」に辿り着きます。これによって世界時が成立したことから、地球を24のタイムゾーンに分割することが定められ、多くの時計メーカーが複数の時刻を表示できる世界時計の開発に傾倒していきました。「ワールドタイム」の生みの親である時計師ルイ・コティエとパテック フィリップの偉大な業績は、この難題をコンパクトな腕時計のサイズで解決したことに尽きます。
“ルイ・コティエ式”と呼ばれるワールドタイム機構の長所は、“シンプルな操作性”と“高い視認性”にあります。文字盤の中央には、通常の時刻を表示する時計、その外周のリングに24時間表記のリングを配置。この2つを連動させることで指定した都市を基準に、世界の主要都市の時間を表示させる機能を実現しています。
長い沈黙を破り、2000年にRef.5110が発表されたことから、「ワールドタイム」は現行コレクションへと繋がる劇的な進化を遂げます。1999年に特許を取得したその画期的な機能とは、たったひとつのプッシュボタンの操作だけで計時精度へ一切影響を与えることなく、時針、24時間表示のリング、都市名を表示したリングをすべて連動させ、時差設定を変更できるという秀逸さが光ります。
2016年の発表から間もなく定番の仲間入りを果たしたRef.5230は、歴代の「ワールドタイム」と比較すると、より現代的かつシックに仕上げていることが分かります。38.5mmの絶妙なサイズ設定、美しいギヨシェ彫りの文字盤、超薄型自動巻きムーブメントによる信頼性など、随所にストロングポイントが見受けられます。ベゼルとピンバックルにダイヤモンドを散りばめたレディスモデルRef.7130も必見です。
ワールドタイム
■Ref.5230 ■38.5mm ■18Kホワイトゴールドケース ■アリゲーターストラップ
■自動巻き(Cal.240 HU)■30m防水 ■価格はお問い合わせください
ワールドタイム
■Ref.7130 ■36mm ■ダイヤ付き18Kホワイトゴールドケース(ベゼルとピンバックルを含め、合計約1.06カラット) ■アリゲーターストラップ ■自動巻き(Cal.240 HU)■30m防水 ■価格はお問い合わせください
CASE.4Ref.5172
手巻き式クロノグラフの
現在進行形
パテック フィリップの技術的壮挙の結晶であるクロノグラフは、クラシックの象徴であると同時に力強いアクティビティを感じさせる複雑機構の代表格。
2019年のバーゼルワールドで発表されたRef.5172は、古典的な手巻き式クロノグラフを彷彿させるレトロなスタイルを踏襲しながらも、現代的な仕様にこだわったユニークな1本です。
太字のアラビアンインデックスを備えた視認性の高い2つのカウンターを持つ文字盤は、 クロノグラフ専用手巻きムーブメントCal.CH 29-535 PSという絶対的な基盤の上に成り立ちます。連続駆動可能時間が約65時間、毎時振動数2万8800回という現代的なスペックは日常でこそ真価を発揮します。
わずか11.45mmで収まったケースの厚みもまた手巻きムーブメントから生まれた産物です。ケースの側面をスリム化するために、サファイアクリスタル製の風防をボックス型に仕上げていることもパテック フィリップらしいこだわりだと言えるでしょう。
クロノグラフ
■Ref.5172■41mm ■18Kホワイトゴールドケース ■カーフストラップ
■手巻き(Cal.CH 29-535 PS)■30m防水 ■価格はお問い合わせください
Store Info
取り扱い店舗
YOSHIDA 東京本店
〒151-0072
東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目13番5号 Google Map
営業時間 10:30~19:30
定休日 年中無休(年末年始を除く)
Tel. 03-3377-5401
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