UP DATE: 2020. 01. 15
連載 パテック フィリップへの誘い
第15回:深遠なるグランド・コンプリケーションの世界
180年以上の歴史を持つ、世界最高峰の時計メーカーPatek Philippe(パテック フィリップ)。
その正規販売店であり、世界を代表する時計店 YOSHIDA(ヨシダ)が、
さまざまな角度からパテック フィリップという至高のマニュファクチュールの魅力を紐解いていく本連載。
第15回は、30年以上にも及ぶパテック フィリップの販売実績を持つYOSHIDAが選ぶ、
グランド・コンプリケーションの注目モデルを取り上げます。
究極のステータスシンボルを
体現する
パテック フィリップの
グランド・コンプリケーション
コンプリケーテッド・ウォッチとは、パテック フィリップの最重要アイテムであると同時に、世界中の富裕層や時計愛好家にとって垂涎の的とも言うべきステータスシンボルになっていることは周知の事実でしょう。
パテック フィリップは1845年に初のミニット・リピーターを発表して以来、時計史に燦然と輝く数々のコンプリケーテッド・ウォッチを世に送り出してきました。代表的な例のひとつとして挙がるのが、創業150周年を記念するために1989年に製作された「キャリバー89」です。開発まで通算9年もの歳月を要し、33種類もの複雑機構を搭載した“世界で最も複雑な懐中時計”として認知されています。
200種類以上にも及ぶパテック フィリップの現行コレクションの頂点に立つグランド・コンプリケーションは、創業者のアントワーヌ・ノベール・ド・パテックが定めた「世界最高の時計をつくる」という社是を最も忠実に体現したコレクションです。時計製作者にとって、困難を極めるグランド・コンプリケーションの開発とは、究極のチャレンジであり、限界を越えるために欠かせない試みだと言え、これらの試練を乗り越えることでパテック フィリップの時計製造技術は他の追随を許さない境地へと辿り着いているのです。
この分野におけるパテック フィリップの卓越性として挙がるのが、極めて複雑な設計であるコンプリケーテッド・ウォッチをユニークピースではなく、現行コレクションの一部として発表している点にあります。同様に、トゥールビヨン、ミニット・リピーター、スプリット秒針クロノグラフ、天文表示タイムピースなどにいたるまで、類を見ないほどの多彩なファミリーを設けていることも注目に値します。
CASE.1Ref.5078 & 5207
時を超越する
ミニット・リピーターの系譜
はるか昔、暗闇の中で時刻を知らせるために発明されたチャイム機構は、最も高度な技術が要求される複雑機構のひとつに数えられます。
「ミニット・リピーターの担い手」とも称されるパテック フィリップは、創業当時からリピーター機構に多くの関心を寄せ、製品の開発に力を注いできました。腕時計としてはじめて手がけたのは、1916年に製作したプラチナケース仕様の5分リピーターを搭載した婦人用時計でした。その後、1925年にはミニット・リピーターがレギュラーに加わり、脈々と続く同社のチャイム・ウォッチの伝統を現代まで引き継いでいます。ここでは現行コレクションの中から代表的な2型を紹介します。
1本目は、ドレスウォッチさながらの美しい外装が特徴のRef.5078。ケース左側に設けられたスライドピースの存在からミニット・リピーターであることを確認できます。コンパクトな38mm径のケースの中には、ミニット・リピーター専用の自動巻きムーブメントCal.R 27 PSが搭載されており、低音・高音の2つのゴングの組み合わせにより時刻を知らせてくれます。2005年の発表以来、パテック フィリップが擁する“ミニット・リピーターの顔”として高い評価を得ています。
続いて取り上げるRef.5207は、2008年に初登場したミニット・リピーター、トゥールビヨン、瞬時日送り式窓表示永久カレンダーを搭載する魅惑のトリプル・コンプリケーション。これらの機構の組み合わせは、パテック フィリップのタイムピースの中でも極めて複雑な部類に入る設計だと言われています。ひと目見てそれと分かる洗練されたデザインは大変人気があり、グランド・コンプリケーションを象徴するモデルとして君臨しています。
ミニット・リピーター
ミニット・リピーター
CASE.2Ref.6102P
新時代の天文表示
タイムピース
「セレスティアル」
グランド・コンプリケーションの中でも特異なオーラを放つ「セレスティアル」は、2002年のバーゼルワールドにてセンセーショナルなデビューを果たした新時代の天文タイムピース。現行のプラチナ製ケースRef.6102Pは2010年に発表されました。
北半球の夜空の星の動きと月の軌道、そしてムーンフェイズ表示する文字盤は、たとえ曇りの夜であっても手元で満点に輝く数多くの星を視認することが可能です。スケルトンの長・短針は平均太陽時による分・時を表示。風防に描かれた楕円ではジュネーブ及び同経度の地点で見える部分を示します。
「スカイムーン・トゥールビヨン」に搭載された機構から着想を得たこれらの天文表示機能は、夜空、星座、月を表す3枚のディスクによって構成されています。それぞれが独立し、異なる速度で動くことで天体の動きを正確に再現します。
時刻測定は天体の観測からはじまったと言われていますが、人類が永らく抱いてきた宇宙へのロマンを機械式時計として表現した「セレスティアル」は、“ラグジュアリーの極み”とも言うべき姿を我々に提示しています。
セレスティアル
■Ref. 6102P ■44mm ■プラチナケース ■アリゲーターストラップ ■自動巻き(Cal.240 LU CL C)
■30m防水 ■価格はお問い合わせください
CASE.3Ref.5270P & 5270/1
伝統を継承する傑作、
永久カレンダー搭載
クロノグラフ
1941年のRef.1518の誕生から、パテック フィリップの重要なコレクションの仲間入りを果たした永久カレンダー搭載クロノグラフ。時代のニーズを的確に汲み取りながら進化し続けるプレステージモデルからは、パテック フィリップが培ってきた技術力、あるいは歴史の重みが感じられます。
永久カレンダー搭載クロノグラフの伝統を受け継ぐRef.5270は、美しいラグに支えられた41mm径ケースに現代的なムードを内包しています。こちらで紹介するのは、Ref.5270としては初となるプラチナケースを採用したモデルです。ゴールド・オーパリンの文字盤は独特のヴィンテージ感と個性を醸し出しています。
一方、エボニーブラック・ソレイユ文字盤とローズゴールドとのコントラストが楽しめるRef.5270/1は、Ref.5270とほぼ同一のデザインでありながらまったく異なる仕上がりに。ケースに統合されたドロップ・リンクブレスレットはゴールドならではの滑らかな肌触りと装着感を堪能できます。
永久カレンダー搭載クロノグラフ
永久カレンダー搭載クロノグラフ
CASE.4Ref.5370P
ヴィンテージ感を醸す
スプリット秒針クロノグラフ
2つのクロノグラフ秒針を備えることで自由に中間タイムを計測できるスプリット秒針クロノグラフとは、「クロノグラフの巨匠」と呼び声高いパテック フィリップにとって、ミニット・リピーター、トゥールビヨンに匹敵する最上位の複雑機構に値します。
1923年には、時計史上初のスプリット秒針搭載腕時計クロノグラフを発表するという歴史的な偉業を達成。近年では、世界で最も薄いスプリット秒針クロノグラフ専用ムーブメンCal.CHR 29‑535 PSの開発を皮切りに、いくつもの記念碑的な傑作を手がけてきました。
ヴィンテージ調の横目のインダイヤルや角型のプッシュボタンを携えたRef.5370Pは、スプリット秒針クロノグラフの現行コレクションの中でも一段と落ち着いた印象に映るモデルです。希少性なタイムピースであることはもちろん、着用しやすいシンプルなスタイリングであることも相まって、永久カレンダー搭載クロノグラフに勝るとも劣らない人気を集めています。
スプリット秒針クロノグラフ
■Ref.5370P ■41mm ■プラチナケース ■ストラップ ■手巻き(Cal.CHR 29‑535 PS)
■30m防水 ■価格はお問い合わせください
CASE.5Ref.5320 & 7140
メンズからレディスまで揃う
永久カレンダー
月により異なる日数を忠実に再現する永久カレンダーもまたパテック フィリップのグランド・コンプリケーションを語る上で外せない機構のひとつです。現行コレクションでは、多大な成功を収め、30年以上も続くロングセラーとなったRef.3940の系譜を引き続くモデルが充実しています。
歴代の傑作を見渡すと、パテック フィリップの永久カレンダーはムーブメントはもとより、控えめかつ完璧なスタイリングが求められていることが浮かび上がってきます。ヴィンテージへのオマージュであることが分かるRef.5320は、パテック フィリップ・ミュージアムが所蔵する1940~50年代のアーカイブから着想を得て製作された人気モデルです。細部までこだわったケースのフォルムにもその美学が宿っています。
さらには、製作の難易度が上がるレディスモデルに着手することで、パテック フィリップの永久カレンダーは他社と一線を画すステージへと到達しています。きらびやかなダイヤモンドセッテングを施したRef.7140は、35.1mm径のケースにマイクロローター式の超薄型自動巻きムーブメントCal.240 Qを搭載することで女性らしさや気品が感じられる高次元のコンプリケーテッド・ウォッチを完成させています。
永久カレンダー
■自動巻き(Cal.324 S Q)■30m防水 ■価格はお問い合わせください
永久カレンダー
CASE.6Ref.6300
20もの機構を統合した
最も複雑な
グランド・コンプリケーション
パテック フィリップの創業175周年記念である2014年。数々の記念モデルが登場した中で圧倒的な存在感を放っていたのが、両面に文字盤を備えた腕時計Ref.5175「グランドマスター・チャイム」でした。
1366個もの部品から構成される驚異のムーブメントCal. 300 GS AL 36‑750 QIS FUS IRMは、パテック フィリップの腕時計では初となるグランドソヌリとブティットソヌリなどの5つのチャイム機構を含む、20種類の複雑機構(そのうち、2つが世界初で特許を取得)を統合しています。わずか7本の限定生産だったことからも大きな話題となりました。
それから2年後の2016年、グランド・コンプリケーションのファミリーに新たに加わったRef.6300は、Ref.5175の後継機にあたるモデルです。Ref.5175が持つ機能はそのままに、前面の黒文字盤はチャイム機能に焦点を当て、裏面の白文字盤には瞬時日送り式永久カレンダー表示を備えています。側面にクルー・ド・パリの装飾が施されたホワイトゴールドのケースは、ラグに組み込まれた特許取得システムによりケースを自由に反転させることで両面ともに使用できます。2019年のバーゼルワールドでは、鮮やかなブルー・オパーリンの文字盤が登場。究極のコレクターズアイテムとして、時計愛好家たちから羨望の眼差しを集めています。
グランドマスター・チャイム
■Ref.6300 ■47.7mm ■18Kホワイトゴールドケース ■アリゲーターストラップ
■手巻き(Cal. 300 GS AL 36‑750 QIS FUS IRM)■非防水 ■価格はお問い合わせください
Store Info
取り扱い店舗
YOSHIDA 東京本店
〒151-0072
東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目13番5号 Google Map
営業時間 10:30~19:30
定休日 年中無休(年末年始を除く)
Tel. 03-3377-5401
Tel.03-3377-5401
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